記事の要約
- 免税事業者の一人親方は、インボイス制度により事業者形態を見直した方が良い場合がある
- 独占禁止法や下請法、建設業法などの法律に抵触していないか
- 発注側も受注者が適格請求書発行事業者であるか確認する
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、販売者が商品やサービスなどを提供した際に、金額などの詳細を記載した請求書(インボイス)を発行し、それを受け取った購入者が支払いを行うという仕組みです。
インボイス制度により、購入者は正確な請求書を受け取り、支払いの際に不正が生じるのを避けることができるとされています。
適格請求書発行事業者とは?
適格請求書発行事業者とは、消費税の軽減税率が適用される商品やサービスを提供する事業者のうち、「適格請求書」を発行することができる事業者のことを指します。
適格請求書発行事業者になるには「適格請求書等の発行等に関する認定要件」を満たしていなければなりません。
事業者は、消費者に対して適格請求書を発行するために消費税率などの情報を正確に記載することが法的に義務づけられています。
インボイスの仕入税額には、税率8%と10%が混在するため、消費税額と消費税率を正しく計算しておくことが重要です。
建設業はインボイス制度導入によりどうなるのか
建設業においても、インボイス制度が関わります。
建設業者のインボイスには、消費税額が記載されていますが、建設業においては、現場ごとに工事の進捗状況が異なるため、支払い条件や発行タイミングについて取引先との合意が必要です。
建設業はBtoB事業が多く、免税事業者である一人親方が発注先の大多数を占めています。
一人親方も、これまで通り発注を受けるためには、インボイス制度への対応を見直した方がいい場合があります。
適格請求書が必要になる
免税事業者でも、取引先からの発注を受ける際、適格請求書の発行を求められる場合があります。
適格請求書には、必要事項が明記されている必要があります。
- 発行者や取引先の情報
- 取引内容
- 消費税額の情報
- 支払い期限 など
適格請求書は、課税事業者しか発行できません。
適格請求書発行事業者になる手順
- 適格請求書発行事業者になるための申請を行います
申請方法は、3つのいずれかの方法で可能です。
- 地方税事務所に直接申請する
- e-Tax(国税庁のウェブサイトで提供される申請システム)
- マネーフォワード クラウドで「インボイス制度の登録申請」
- 申請書に必要事項を記入し、申請書に必要な書類を用意して提出します
- 税務署から登録番号の通知が届き、適格請求書発行事業者に認定されます
免税事業者の取引が減少する
消費税の納税が免除される免税事業者は、消費税の請求書を発行しなくて良いです。
しかし、仕入額控除を受けたい事業者に適格請求書を要求される場合もあります。
発行が難しければ、取引に影響を及ぼしてしまうかもしれません。
インボイス制度が導入されると、適格請求書を発行できない事業者は取引が制限される可能性があります。
課税事業者側は、免税事業者との交渉を減らすもしくは終了させないための策として、請求時に本体価格の中に消費税を組み込む(値引き)方法も考えられます。
経理業務の負担が増加する
インボイス制度により、適格請求書の発行義務が開始されると事業者は、請求書の作成や発行に関する業務を担当するスタッフを配置する必要があります。
適格請求書を自動発行することができるシステムを整備する必要があり、システムの導入や運用のコストがかかるでしょう。
請求書のフォーマットが変わり記載する内容が増え、経理業務の工程にも影響があるでしょう。
例
- 取引先の登録番号の照合
- 適格請求書の要件を満たしているか
- 税額計算・記帳方法の使い分け
- 課税事業者との取引と免税事業者との取引の仕入税額控除対象の仕分け など
インボイス制度導入後に建設業者が発注する際の注意点
- 建設業者は、発注する際に事前に請求書の提出を確認する(事前に納期や支払い条件などを明確にする)
- 建設業者は、発注前に消費税の計算方法を確認し、正確な見積もりや支払い金額を算出す
- 適格請求書を電子的に交換するためのシステムがあるか(データを保管するため)
発注先が適格請求書発行事業者か確認する
適格請求書発行事業者である場合、請求書の発行が義務付けられています。
正しい請求書が発行されているかを確認することで、支払い遅延や税務罰金などのリスクを回避することができます。
発注する建設業者が課税事業者である場合は、仕事を依頼する一人親方が適格請求書発行事業者であるかを確認しておきましょう。
適格請求書発行事業者であるかの確認は、国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」から分かります。
検索を行う際は、13桁の登録番号が必要です。
法律に抵触しないようにする
法律に抵触しないようにするためには、必要事項が欠けたり、間違った情報が記載された請求書を発行しないことです。
インボイス制度に限らず、ビジネスにおいては常に法令を遵守することが大切です。
インボイス制度の実施を契機に、取引条件を変更する場合は、独占禁止法や下請法、建設業法などの法律に抵触しないよう注意しましょう。
- 相手が免税事業者であることを理由に、断れないような仕事を発注した
- 事業者の都合のみで著しく低い価格を設定して仕事を発注した
こうしたケースは、優越的地位のある仕入れ側の事業者が、独占禁止法等の法律に抵触する可能性があります。
インボイスが要件を満たしているか確認する
適格請求書を受け取る際には、必要事項が正確に記載されているか確認しましょう。
- インボイス発行事業者の氏名または名称および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨も記載)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
- 消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
これらの項目が欠けていたり、不備がある場合は、要件を満たしていない可能性があります。
インボイスは、紙の請求書と同様に保存します。
電子ファイルの場合は、保管期間中にデータが破損しないよう、適切なバックアップを行うことが必要です。
免税事業者には発注しないほうが良い?
インボイス制度導入後には、適格請求書を発行できる事業者とそうでない事業者が明確に分かれるため、免税事業者が適格請求書を発行できない場合は、税負担がかかります。
消費税がかからないことが前提条件であった場合は、免税事業者に発注する前に、適格請求書を発行できるかどうかを確認することが重要です。
適格請求書を発行できない場合は、消費税分の価格の見直しが必要となる可能性があります。
適格請求書を発行できるかどうかを確認することができれば、発注することは問題ないでしょう。
発注先を選ぶ際には、価格だけでなく、品質や納期、信頼性などを総合的に判断することが望ましいです。
まとめ
インボイス制度の導入により、建設業において一人親方のような個人事業主は現在よりも負担が大きくなるということを解説しました。
適格請求書発行事業者とそうでない事業者が明確に分かれるため、発注する際には、消費税額がかからないことを前提条件に、適格請求書を発行できるかどうかを確認する必要があります。
また免税事業者は、取引の減少や値下げ交渉が行われるのであれば、課税事業者になることを考えた方がいい場合があります。
2023年10月までにインボイス発行事業者の登録を行ってからも、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める「登録取消届出書」 を提出することもできるので、様子を見て判断しましょう。
補助金を活用してインボイス制度へ対応しよう!
インボイス制度に対応するには、請求書や領収書の様式を適格請求書に合わせる必要があります。そのため、既存の会計、受発注システムの改修・新規購入が必要です。しかし、多くの中小企業、小規模事業者にとってコスト増は大きな負担になると考えられます。
そんな時におすすめなのが「補助金」です。補助金を活用すればインボイス制度へ対応するための費用をカットできるかもしれません。
株式会社アスライトでは補助金・助成金の申請が可能かどうかの無料診断を行っています。