記事の要約
- インボイス制度における振込手数料の取り扱いは異なる
- 適格請求書の交付義務が免除されるものがある
- 振込手数料の負担は返還インボイスによって控除される
補助金を活用してインボイス制度へ対応しよう!
インボイス制度に対応するには、請求書や領収書の様式を適格請求書に合わせる必要があります。そのため、既存の会計、受発注システムの改修・新規購入が必要です。しかし、多くの中小企業、小規模事業者にとってコスト増は大きな負担になると考えられます。
そんな時におすすめなのが「補助金」です。補助金を活用すればインボイス制度へ対応するための費用をカットできるかもしれません。
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インボイス制度における金融機関の手数料は必要?
金融機関での振込手数料のインボイスは必要です。これがあることにより、振込手数料分の仕入れ額控除を受けることが可能となります。
インボイス制度が始まると、振り込み手数料の仕入れ額控除を受けるには、インボイスがなければならなくなりました。これは、金融機関の窓口からの振り込みである場合と、数百円の振込手数料の場合であっても対象です。
しかし、令和5年度税制改正大綱において、「売手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合には、返還インボイスの交付義務が免除」となる見込みになっています。
なぜなら、売り手と買い手の取引間で、頻繁に行われる取引に、両者にとっても負担となる手続きが発生する煩わしさが懸念されたためです。つまり、売り手が振込手数料を負担することは、“振込手数料分の金額を値引きした”ということになり、''売り上げに係る対価の返還を行う''となるので、返還インボイスの交付が必要となる、というようなケースが多いためです。
これは、「少額な返還インボイスの交付義務の見直し(案)」となっています。適応対象者は全ての方が対象で、特に制限はありません。また、期間に関しても、適応期限のない恒久的な措置となっています。
内容の中には、以下の場合に対して、返還義務が免除されることとなります。
- 税込1万円未満の売り上げに係る対価(返品,値引き,割戻しなど)の返還がある場合
- 税込み1万円未満の返品等がある場合
しかし、ここで注意すべき点もあります。それは、書面の同意が必要ということです。このことは「少額な返還インボイスの交付義務の見直し(案)」にも記載されており、合意が確認できる書面がない場合、下請法違反となる場合があるため気を付けたいところです。
返還インボイスは、適格返還請求書ともいいます。
振込手数料のインボイスはATMを利用すれば必要なし
振り込み手数料がかかってしまうことが分かりましたが、その対策として、ATMを利用することがあります。
振り込み手数料を免除するため、振り込みをATMに揃えることをおすすめします。しかし、対象でない場合があるので、以下のことに注意してください。
- 対象:自動販売機による飲食料品の販売
- 対象:コインロッカーやコインランドリーによるサービス
- 対象:金融機関のATMによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービス
- 非対象:機器装置によりただ清算が行われているだけのもの
- 非対象:コインパーキングや自動券売機のような資産の譲渡等は別途おこなわれるようなもの
- 非対象:ネットバンキングのように機械装置で資産の譲渡等が行われないもの
対象となるものは、インボイスを交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除されます。これは適格請求書発行業者が行う業務の性質上によるものです。しかし、非対象のもは交付義務が免除されているわけではないので、要注意です。
つまり、ATMの利用によってインボイスの交付義務が免除されるが、ネットバンキングは免除されないということです。同じ銀行関係でも違う部分があるので、整理しておくと良いでしょう。
振込方法別インボイス保存の要否
振り込み手数料に係るインボイスの対応の仕方は、振込方法によって変わってくるので、以下の表を参考にしてみてください。
No | 振込方法 | インボイスの保存要否 |
1 | 金融機関の窓口における振込等の手数料 | 必要*。振込サービス等に係る手数料は、消費税の課税対象です。窓口における振込手数料等にもインボイスの交付義務が生じるので、金融機関の窓口で振込等を実施した場合は、手数料に係るインボイスを受け取り、保存することが必要となります。 |
2 | ネットバンキング(インターネットバンキング)における振込等の手数料 | 必要*。上記と同様。振込サービス等に係る手数料は、消費税の課税対象です。ネットバンキングにおける振込手数料等にもインボイスの交付義務が生じるので、手数料に係るインボイスを受け取り、保存することが必要となります。 |
3 | ATMにおける振込等の手数料 | 不要(保存義務なし。3万円未満のATMの振込手数料等は、インボイスの交付が困難なため、交付義務が免除されています) ただし帳簿の保存は必要です。インボイスを保存する代わりに一定事項(利用ATMの設置場所等)を記載した帳簿の保存により仕入税額控除を受けることが可能となります。 |
*令和5年度税制改正大綱「一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の適用対象」に該当する場合は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能になる見込みです。
そもそも振込手数料はどちらが負担すべき?
インボイス制度においても、厄介になってくる手数料ですが、その手間故にどちらが負担すべきか疑問に思う人もいるでしょう。
ここでは、そんな手数料を負担するのはどちら側であるべきかについて解説していきます。
原則は、買い手が負担するべきとなっていますが、異なる場合もあります。
売り手が振込手数料を負担するケース
割引などの目的で、売り手側が手数料を負担する場合があります。しかしその場合は、双方の同意と内容を明記した合意の契約と書面が必須となります。
これは民法484条、485条にも、買い手の債務は債権者である売り手の口座に振込入金することで弁済なされたとなり、その手数料も弁済の費用に該当するというような記載があるためです。
売り手負担の振込手数料を処理する方法
売り手が振込手数料を負担することは多々あり、それほど珍しいことではありません。そして先ほどの理由などから、手数料について、請求書に明示されている場合がほとんどです。
これが、インボイス制度の導入により、各々の対応が異なるので要注意です。
売り手負担の振込手数料の処理方法について、2つのパターンがあるので、以下で解説していきます。
売上値引きとして処理する
1つ目は、振込手数料を値引きとして処理する方法です。両者合意のもとであっても、勝手に差し引いて振り込まれた場合であっても、対処方法上は、値引きを行うことと同様の対応が必要です。
したがって、売り手は、手数料を値引きとして処理する場合、買い手に「適格返還請求書」を交付しなければなりません。
また、振込手数料を一時的に買い手が負担することも可能です。これは、売り手が持つべき振込手数料を買い手が立て替えている状態なので、振込入金時にその分の金額が清算されることとなります。
この時、インボイス制度上で仕入税額控除を認められるには、「建替金清算書」と「インボイス」の2種類の書類を買い手から受領することが必要です。また、両方の書類の保存も必須です。
少額なインボイスであれば手数料は必要なし
上記のように、両者の間でもやり取りがあり、手続きも重なってくるため、振込手数料が少額だった場合に、その金額に見合わない事務負担が懸念されていました。
しかし、税込1万円未満を少額とし、それに対する返還インボイスの交付義務が免除されるということが認められる予定です。
まとめ
新たな制度、インボイス制度が導入されれば、銀行の振り込みに係る手数料において、色々注意すべき点があることがわかりました。
振り込み手数料を負担する側によって対応が変わるので、必要なことをおさえておくことが大切です。