記事の要約
- 原則2023年3月31日までにインボイスへの登録申請が必要
- インボイス制度が始まると請求書様式や税金面に大きな変化が生じる
- インボイスに登録しないと取引先が消滅する可能性がある
インボイス制度が始まるとどうなる?
まず初めに、インボイス発行事業者になるかならないかの選択をしなければなりません。
もし、インボイス発行事業者になるのであれば、原則2023年3月31日までに登録申請を済ませる必要があります。インボイス制度自体がはじまるのは、2023年10月1日からですが、インボイス発行事業者になる場合の登録申請はもう始まっているので、今から行動できます。
インボイス制度とは、適格請求書等保存方式といい、インボイスのことを適格請求書と言い換えることができます。
適格請求書(インボイス)とは、販売先に対し、税率と税額を正確に伝えるため、従来の区分記載請求書に必要事項を追記した請求書のことです。このインボイスを利用したものをインボイス制度といいます。ですので、インボイス制度導入後の請求書にも、従来とは異なる多くの違いがでてきます。
インボイス制度がはじまると、インボイス制度を導入した企業やインボイス制度をもとめるカスタマーに対応する必要がでてきます。
また、現在使用中のものであってもインボイス対応のものに入れ替える必要がでてきます。例えば、請求書の様式、販売管理システム、明細書等に係るシステムなどです。
さらに、インボイス発行業者になると、様々な義務がかされます。例をあげると、インボイスの発行義務、返還インボイスの発行義務、修正インボイスの発行義務、写しの保存義務などです。
他には、インボイスを発行しないと、原則として販売先は消費税の仕入税額控除ができなくなります。事業者の形態のより不具合がおきたり、様々な負担がかかることになるでしょう。
自社が課税事業者である場合
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課税事業者である自社は仕入税額控除を行い、消費税を納付します。仕入先からインボイスを入手できないと、自社は仕入税額控除ができません。そのため、自社の税負担の増加につながる可能性があります。ただし、簡易課税制度(※2)を選択している場合には、みなし仕入率に基づき仕入税額控除の計算をしますので、自社の税負担は増加しません。
また、インボイス制度導入後6年間は、免税事業者等からの仕入についても一定割合(最初の3年間は80%、次の3年間は50%)を仕入税額控除できる経過措置(※3)がありますので、上手に活用しましょう。 |
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自社が免税事業者である場合 | 免税事業者である自社は、消費税の納付が免除されますが、インボイスを発行することができません。自社がインボイスを発行しないと、販売先は仕入税額控除をすることができません。それにより、販売先の税負担が増加するので、取引を見直される可能性があります。このような状況にならないよう、インボイスの発行を希望する場合は、インボイス発行事業者の登録申請をご検討ください。 ただし、インボイスの発行事業者になるかどうかは任意であるため、最終的には経営者の判断となります。 |
自社が課税事業者であってもインボイスの登録申請を行わない場合 | 自社が課税事業者であっても、インボイスの登録申請を行わない場合には、上記免税事業者の場合と同様に、販売先は仕入税額控除をすることができず、販売先の税負担が増加するので、取引を見直される可能性があります。このような状況にならないよう、インボイスの発行を希望する場合は、インボイス発行事業者の登録申請をご検討ください。 ただし、インボイスの発行事業者になるかどうかは任意であるため、最終的には経営者の判断となります。 |
インボイス制度は今後どうなる?
インボイス制度は、2022年12月に発表され、2023年3月までに成立する見込みとなっています。
このインボイス制度には、インボイスを受け取らなければ買い手側が仕入税額控除ができなくなるという面があり、インボイス制度を行うかどうかによって取引するかしないかの線引きが発生することが予想されます。
インボイス制度に登録するかどうかは任意なので事業者の判断にゆだねられています。
以下の改善点された点や経過などを参考にしっかりと判断することが求めれるでしょう。
申込期限が変更された
2023年10月1日のインボイス制度施行開始日からインボイス制度に対応するためには、2023年3月31日までに登録申請をする必要がありましたが、例話5年度税制改正大綱により、2923年9月30日までに登録申請期限が伸びました。
その他、その後の申請に関しては登録申請提出日が、当該課税期間の初日から起算して15日前の日までとなりました。取り消しについても同様で、課税期間の15日前までに申請となっています。
消費税の緩和措置が設けられた
売上が1,000万円以下などが免税事業者だった従来の場合が、この条件に該当する場合、インボイス発行業者になると、本来納めるべき消費税額の2割のみ納税すれば良いということになりました。
例えば、税抜きの商品を税込みで販売した場合、消費税はその税込み分の値段になります。上記の条件に該当する場合、この状況においては、納税する消費税額は、消費税額分の2割になるということです。
つまり、納税の選択肢にあった、原則課税で納税する、と、簡易課税で納税するか、に、今回の2割特例が選択肢として加わったカタチになります。
しかし、事業によっては2割特例を選択するより、簡易課税を選択したほうがお得な場合もあります。また、この2割特例は、インボイス制度開始前(2023年10月1日より前)から課税事業者を選択している小規模事業者は対象外とうことにもなっていますので、よく内容を把握する必要があります。
1万円未満の仕入れはインボイスが不要になった
以下の条件において、少額特例が2023年10月1日から2029年9月30日まで施行されることになりました。
年間の課税売上高が1憶円以下、あるいは特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者である場合。
上記の場合は、仕入れの商品購入額が1万円未満であれば、インボイスがなくとも仕入税額控除ができる経過措置がとなっています。この経過措置期間は、2023年10月1日から2029年9月30日となっています。
1万円未満の適格返還請求書が不要になった
「適格返還請求書」というものを、顧客に交付する決まりが、インボイス制度がスタートして以降ありましたが、この交付がある条件下では不要となりました。
その条件とは、返還などに係る税込み価格が1万円未満である場合です。
これは、令和5年度税制改正大綱によって、変更され、恒久的なものとなっています。
持続化補助金の補助上限額が50万円加算された
インボイス制度に登録した免税事業者は、持続化補助金の補助上限額が一律50万円加算されるという、緩和措置がとられました。
さらに、デジタル化基盤導入類型であるIT導入補助金の、下限額が撤廃されました。これにより、安価な会計ソフトの導入のための補助金の申請が可能となりました。
インボイス制度へ登録しないとどうなる?
まずは、インボイスを発行できません。これは、あなたと取引する買い手側が仕入税額控除をできなくなることをさします。そうすると、あなたの商品やサービスを購入することがなくなる可能性があります。
東京商工リサーチが実施した調査(2022年12月上旬実施)によれば、事業者の1割強はインボイス制度が施行された後は、免税事業者とは'取引しない'と回答しています。インボイス制度に登録するとは、すなわち、今までが消費税免税事業者でも、消費税課税事業者になるということだからです。
インボイスへ登録するためにすべきこと
では、実際にインボイス制度へ登録することを決意しても何から準備すれば良いのかわからない方も多いと思います。
ここでは、制度導入に向けた準備を解説していきます。
インボイス発行事業者へ登録申請をする
インボイスの発行ができる事業者になるべく、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を、税務署へ提出しましょう。これにより、インボイス発行事業者に登録が完了します。しかし、まずは課税事業者になる必要があるため注意してください。
請求書の様式を一新する
請求書の様式を、インボイスの記載事項がかけるものにフォーマットを変更する必要があります。
また、小売業や飲食店業などで、不特定多数の者に対して販売等を行う事業者は、インボイスの代わりに適格簡易請求書の発行が可能です。
他にも、複数の書類による対応も認められています。
システムを改修する
販売管理システムを、インボイス対応のものにする必要があります。現在使用中のものも対象です。市販品であれば、自動対応されることが多いので確認すると良いです。
また、端数処理についても注意が必要です。明細書ごとに端数処理を行っている場合はシステムの改修が必須ですのでご確認ください。
インボイス制度の抜け道はない
インボイス制度に抜け道はありません。
インボイス制度に登録するかしないかの選択は、全事業者が対象となる問題です。全ての事業者は、これを経営課題と捉え、登録すべきか否か、メリットやデメリットを熟考し決断する必要があります。
インボイス制度が廃止される可能性はあるのか
現時点では、その可能性はとても低いでしょう。可能性があるとするなら、2023年3月までです。税制の修正が3月になってから発生することが稀にあるためです。
しかし、その可能性はほとんど無いに近いので、今からインボイス制度へ登録するかしないかはしっかりと考えておくべきです。