2023年10月に導入されるインボイス制度ですが、政党が廃止を求め申し入れをしていることをご存知でしょうか。
免税事業者に厳しい判断を迫っているインボイス制度ですが、個人事業主団体からも廃止を求める声が上がっています。
そこで今回はインボイス制度を廃止すべく政党が申し入れたことや、もう廃止はできないのかについて解説します。
立憲民主党がインボイス制度の廃止を申し入れ?
2021年9月8日、立憲民主党がインボイス制度の廃止を求め財務省へ申し入れを行いました。
立憲民主党は8日、政府が導入を予定している適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度の導入延期と改善を財務省に申し入れました。現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で多くの事業者が厳しい状況に置かれている中、このまま同制度の導入を進めることは、事業者をさらに困難な状況に追い込みかねないことから、伊藤渉財務副大臣に以下の措置を早急に講じるよう強く求めました。
申し入れの内容はこちらから確認ができます。
インボイス制度導入延期と改善を求める要望書は?
立憲民主党が申し入れた「インボイス制度導入延期と改善を求める要望書」についてはこちらからダウンロードが可能です。
申し入れ後に対応に当たる会長らが取材に応じ伊藤副大臣へ伝えたことを開示しています。
他の政党も申し入れをしている
今回、申し入れをおこなったのは立憲民主党だけではありません。
政党 | 立場 | 見解 |
---|---|---|
自由民主党 | 推進 | 免税事業者への影響を最小限にするため、移行までの十分な準備期間と経過措置等の対策を講じる。 |
公明党 | 推進 | 消費税転嫁拒否を防ぐために必要な制度である。免税事業者への影響は経過措置や簡易課税制度の利用によって軽減できる。 |
社民党 | 推進 | インボイス制度は歓迎。しかし、簡易課税制度の拡大や、経過措置の延長などの対策を講じるべき。 |
日本維新の会 | 推進 (延期も検討) |
インボイス制度は必要な制度である。しかし、新型コロナの影響を考慮し延期も検討すべき。 |
立憲民主党 | 反対 | インボイス制度を導入しなくても、適正な課税が可能と判断したため、廃止法案を提出した。 |
日本共産党 | 反対 | 免税事業者は消費税を転嫁できておらず、そもそも「益税」はほとんど発生していない。インボイスの導入は中止すべき。 |
国民民主党 | 反対 | コロナ禍の影響が収束するまで事業者の消費税を免除。インボイス制度は導入しない。 |
社民党 | 反対 | |
れいわ新選組 | 反対 | 消費税自体を廃止すべきである。 |
このように各政党がインボイス制度について否定的な見解を公開しています。
さらに、以下のような団体もインボイス制度に反対をしており反対活動は激化する一方です。
- 日本税理士会連合会
- 東京税理士政治連盟
- 東京商工会議所
- 全国青色申告会総連合
- 全国商工団体連合会
- 全国建設労働組合総連合
- 全国中小企業団体中央会
- 中小企業家同友会全国協議会
- 全国青年税理士連盟
これらの申し入れが政府にどう届くかが肝になってきます。
インボイス制度導入はもう確定している?
さて、政党や数多くの団体がインボイス制度について否定的な見解を示している現状がありますが、導入はもう確定なのでしょうか。
結論ですが「ほぼ確定」しています。
というのもインボイス制度導入については決定事項になっており、国会で議案提案・審議可決されており消費税法にしっかりと明記されています。
さらに、2021年10月1日よりインボイス制度への事業者登録も開始していますので、今から廃止ということは考えづらいでしょう。
もしインボイス制度を廃止したい場合は、国会議員に申し入れを行い法律そのものをガラッと変える必要があります。
インボイス制度はもう廃止できないのか?
先ほどインボイス制度導入は「ほぼ」確定とお話ししました。
100%ではなく「ほぼ」確定状態となっていますが、今からでもインボイス制度を廃止させることは不可能ではありません。
法律成立後でも延期した事例がある
消費税法に記載されているインボイス制度ですが、実は法律が成立した後に延期になった事例があります。
代表的なのは「消費増税法」です。
消費税率10%への引き上げを2017年4月から19年10月に再延期する税制改正関連法が18日午前の参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。酒を除く飲食料品の消費税率を低く抑える軽減税率や、自動車の新税導入など、消費増税に合わせて予定していた他の税制の見直しも見送る。
もともと2015年10月に消費税が10%に引き上げられると消費増税法へ記載されていましたが、結局増税されたのは2019年10月。
約4年間にわたり計2回延期されています。
このように一度決まった法律でも国民や団体の努力次第で延期に持っていくことが可能です。
ただ「廃止」は現実的ではありません。
個人事業主は怒りの声を上げている
実際に、インボイス制度を廃止すべく個人事業主は怒りの声を上げています。
フリーランスで働く編集・ライターの小泉なつみさん(38)は昨年11月、インボイス制度の見直しを求めて地元の東村山市議会に陳情書を提出しました。12月1日にオンライン署名「STOP!インボイス」を始めると、わずか1週間ほどで3万人を超え、現在も署名数は伸び続けています。
すでに消費税や法人税が個人事業主を痛めつけている中、売上1,000万円以下の免税事業者に対してインボイス制度が導入されれば、生活が困窮することは容易に想像ができます。
しかし、それでもインボイス制度導入を決行しようとしている政府の姿勢に対して個人事業主からは怒りの声が上がっているのです。
まとめ
今回はインボイス制度の廃止を政党が申し入れていることについて解説しました。
インボイス制度は撤廃すべき制度であり、免税事業者には何の得もありません。
実際、SNSでも多くの声が上がっており署名活動も盛んに行われている現状があります。
政府へこの声は届くのでしょうか。